大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 昭和39年(ワ)5492号 判決 1967年7月07日

主文

被告は原告に対し、金二八〇、七四五円およびこれに対する昭和三九年一二月四日から支払ずみまで年六分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

この判決は、仮に執行することができる。

事実

原告訴訟代理人は、主文と同旨の判決、ならびに仮執行の宣言を求め、

その請求の原因として、

「一、原告は高級印刷物の印刷を目的とする株式会社であり、被告は旅館営業を目的とする株式会社である。

二、原告は被告から、昭和三七年四月初旬宣伝用パンフレツトの製造注文をうけ、代金の支払は月末払いの約定で、同年四月二六日から同年五月一九日までの間、左記のとおりパンフレツト合計三〇三五〇枚代金合計五六一、四七五円を被告に納入した。

<省略>

三、そこで、原告は被告に対し、右代金内金二八〇、七四五円およびこれに対する支払期日の後である昭和三九年一二月四日から支払ずみまで商事法定率の年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。」

と述べ、被告主張の消滅時効の抗弁に対し、

「一、本件請求の代金は売掛代金ではなく請負代金であるから、民法一七三条の消滅時効にかからない。

二、仮に本件代金債権が二年の短期消滅時効によつて消滅するものであるとしても、つぎのとおり時効が中断されている。

(一)  原告はパンフレツト納入後、毎月被告に対し請求書を送付しているのみならず、昭和三七年一二月一日被告から同年四月二六日納入のパンフレツト代金七、四〇〇円と五月一日納入のパンフレツト代金の内金として二七三、三三〇円合計二八〇、七三〇円の支払をうけたので、本訴請求においては、その残代金の二八〇、七四五円の支払を求めるものであつて、右支払のあつた昭和三七年一二月一日には原告請求の債権を承認していたのであるから右同日時効の中断があり、さらに右の日から二年以内の昭和三九年一一月一〇日本訴の提起により時効は中断されている。

(二)  また、右中断事由の理由がないとしても、前記昭和三七年五月納入のパンフレツト代金債権の時効は完成していない。すなわち、右代金の支払期日から二年内の昭和三九年五月二〇日に本訴請求の前記残代金を支払つてくれるように催告し、これにより六ケ月内の同年一一月一〇日に本訴を提起したのであるから、本訴請求債権の時効は中断されている。」

と述べ、

被告訴訟代理人は、「原告の請求を棄却する、訴訟賃用は原告の負担とする。」との判決を求め、答弁および抗弁として、

「一、原告主張の請求原因事実は認める。

二、しかして、原告請求の売掛代金債権は、被告に請求しないで二年以上を経過しているから、民法一七三条の規定により既に時効によつて消滅している。」

と述べ、原告主張の再抗弁に対し、

「一、原告から被告に納入した印刷物の法律関係が、売買、請負のいずれの債権関係であるにせよ、原告は民法一七三条一号の生産者、若しくは同条二号の製造人に該当し、二カ年の短期消滅時効により消滅することに変りはない。

二、原告が内金二八〇、七三〇円の支払をうけたことは知らないし、その余の事実を争う。被告が原告に内金の支払をしたことを知らない経緯は、つぎのとおりである。

1、被告は、温泉郷白浜において旅館業を営むため、建築費用の一部を訴外松山権伊から借り入れて三階建の建物を新築したが、昭和三七年七月二七日被告の知らないうちに右松山との間で即決和解が成立したとして和解調書が作成され、同年一〇月二七日右調書に基づく強制執行により右建物を明け渡し、右松山がこれを占有するに至つた。

2、しかして、右和解調書の条項中に、右松山が被告に一〇〇〇万円を支払う旨定められ、右松山は被告のために八〇〇万円を支払つたといつているから、原告が内金の支払をうけたというのは、恐らく右金員のうちから分配をうけたものと思われるが、これは被告から支払つたものではなく、第三者から受領したものであるから、債務者に関係なく支払われた第三者の一部支払により時効中断の効力は発生しない。」

と述べた。

証拠(省略)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例